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2012-10-24 (水) | Edit |
〈前回のあらすじ〉

熱中症で倒れてしまったつむりんは、けろたとクラウディア博士の看病で、無事に目を覚ましました。
博士の説得を再開する二人ですが、新たな難題が村を襲います。
川の氾濫を食い止めようと、奔走するきいぼう。
それぞれの譲れない思いがぶつかり合います。
過去を捨て去ろうとする博士は、過去を失ったつむりんの必死の訴えに、とうとう心を動かされたのでした。
鍵を手に入れた三人は、大急ぎで水門を目指します!
希望のそびえる大地5-32

*****

水門へ向かう途中、多くの学者たちが川沿いに集まっているのが見えました。
土のうを積んだり、風車を止めたりと、大わらわです。

走りながら、けろたはつむりんを気遣います。
希望のそびえる大地6-1
「大丈夫、つむりん? 無理しなくていいからね。辛かったら、らいぞう博士のおうちに戻るんだよ」
「ありがとう、けろた。でも、大丈夫。クラウディア博士からいただいた栄養水があるもの。それに・・・どうしても自分の手で水門を開けたいの!」
つむりんがお手手の中の、鍵を握りしめます。
つむりんの気持ちがわかるけろたには、これ以上止めることはできません。
だから、励まします。
「頑張ろうね、つむりん!」 


遠くのお山の上で、橙色の染まったお日様が、お休みの準備を始めた頃。

三人は、ようやく水門近くの分岐点までたどり着きました。
川の勢いは激しく、今にも氾濫しそうです。
希望のそびえる大地6-2
「まいったな。朝、見た時よりも勢いが増してやがる! いいか、二人共! 絶対、川に近づくんじゃねぇぞ! 流されたら最後、助からねぇからな!」
けろたもつむりんも、余りの川の有様に、ただただ恐怖を感じる他ありません。
昨日まで、穏やかに流れていたのに、まるで別の川みたいです。
いつもは力強さを感じさせる『きいちくりん号』までもが、叩きつける飛沫の激しさに、今や命綱と化した舫い綱(もやいづな)を頼りに、じっと耐えるしかない様子でした。

水門を見渡せる場所に辿り着くなり、三人はびっくりしてしまいます。
希望のそびえる大地*6-50
なんと、門をささえる柱までもが、水に浸かっていたのです!
希望のそびえる大地6-4
水かさは最早、三人の足元にまで達する勢いでした。
希望のそびえる大地6-5
「大変! これじゃあ、近づけないわ!」
「どうしよう、きいぼう?」
どうにかして渡れないかと、キョロキョロする三人。
「あっ、あそこ!」
けろたが指差す方向を見ると、夕日でオレンジ色に染まった木々が並んでいます。
希望のそびえる大地6-53
「見て! こっちの岸から水門まで繋がってる。あの木に登って、枝から枝へ渡っていけないかな?」
きいぼうは腕組みして考えますが、表情は芳しくありません。
「・・・駄目だ。水の勢いで木が揺れてる。ただでさえ不安定な足場なんだ。バランスを崩したら、落っこちかねねぇ。もっと別の方法を考えよう」
いつもと違う元気のないきいぼうに、けろたとつむりんも不安を隠せません。
きいぼうの視線が『きいちくりん号』に注がれています。

そんな時です。
「おーい!」
水流に紛れて、微かに声がしました。
三人は顔を見合わせます。

「おーい! 無事かぁ!」
小さな声が徐々に近づいて来ました。

「あの声はもしかして?」
「間違いないわ」
「おやっさんだ!」

「おーい! けろっ子ぉ!」
見れば、らいぞう博士が多くの学者たちを引き連れて、こちらへ駆けてくるではないですか。
学者のほとんどが、手に木槌を携えていました。
希望のそびえる大地6-6
「おやっさーん!」
すっかり元気をなくしていた三人でしたが、らいぞう博士を見るなり、笑顔を取り戻しました。
博士が汗だくで駆けつけます。
「すまねぇな、おめぇら! すっかり遅くなっちまった! 船は無事か!」
「あったぼうよ! おいらの相棒なんだぜ。そんなやわじゃねぇや! それより見てくれよ、あれを。門が水に浸かっちまって、とてもじゃねぇけど近寄れねぇ!」
希望のそびえる大地6-7
らいぞう博士は水門を見るなり、頭をかきむしりました。
「てやんでぇ! これじゃあ、門を開けるどころか、壊すことも出来ねぇじゃねぇか!」
「門を壊すんですの? どうして?」
「仕方ねぇだろ。クラウディアのババアが鍵を寄越さねぇんだ! それ以外、方法はねぇ!」
「待ってくれよ、おやっさん! 鍵ならあるんだ! ほら、ここに!」
希望のそびえる大地6-8
きいぼうがつむりんの持つ鍵を指さしました。
らいぞう博士は目も口もまんまるにして、驚きます。
「おうおうおう。そいつぁ、本物かい? あのババアが折れたってのか? 一体、どんなからくりだよ、こりゃ?」
「つむりんが説得してくれたんだ。おいらだけじゃ、駄目だった」
みんなが、つむりんを見ました。
らいぞう博士はまだ、信じられない様子です。
「俺ぁもう、いよいよ水門壊すしかねぇって諦めてな、村の奴ら、説得して回ったってぇのに・・・」
博士はつむりんに向かうと、がばっと頭を下げました。
「いや、すまねぇ、お嬢ちゃん! 村のゴタゴタに巻きこんだ挙句、嫌な思いまでさせちまって」
つむりんは慌てて首を振ります。
「いいえ、そんな・・・! 私じゃありません。クラウディア博士が勇気を出して下さったおかげです。自分の過ちを認めるなんて、簡単にできることじゃありませんわ。だから、らいぞう博士。どうかクラウディア博士を許してあげてください。博士はたくさん、苦しんだんです。誰にも言えない悩みを抱えて、追い詰められてしまったんですわ! どうか、責めないであげてください!」
つむりんの真っ直ぐな訴えに、らいぞう博士は力強く頷きました。
他の学者たちも同じです。
「よし! とにかく今は水門だ! クラウディアのババアの気持ちを無駄にしねぇためにも、踏ん張らねぇとな!」


らいぞう博士たちの決意も虚しく、川の勢いは増す一方でした。
溢れだした水流が、とうとう川べりを濡らし始めたのです。

次々に案を絞りだす学者たちですが、どれもこれも納得の行かないものばかり。
「かあっ! 参ったぜ、こりゃ! こうも飛沫が強ぇとはな。うかつに踏み込めねぇじゃねぇか」
「それなんだけどよ、おやっさん」
きいぼうが提案しました。
「『きいちくりん号』をうまく、使えねぇかな」
「何ぃ? 船をか」
博士が『きいちくりん号』を見ます。
希望のそびえる大地6-9
「門に近づくには、もうそれしかねぇと思うんだ。幸い、まだ乗り込める位置にあるしよ」
確かに、『きいちくりん号』は川の勢いに押されてはいますが、舫い綱のお陰で、川べりに沿って浮かんでいるのです。
らいぞう博士は腕組みして、考えました。
「確かにいい案ではあるが・・・駄目だな。こんなに流れが早くっちゃあ、おめぇ。いくらなんでも舵が効かねぇだろう。綱を切った途端、門にたたきつけられておしまいだ。そんなことになったら、乗ってる奴の命がアブねぇや。そんな案を受け入れるわけにはいかねぇよ」 
反対なのは、らいぞう博士だけじゃありません。
学者たちも、誰もが渋い顔です。
しかし。
「大丈夫なんだよ、おやっさん! 舫い綱をうまく利用すれば」
「何ぃ? どういう意味でい?」
何故か胸を張るきいぼうに、らいぞう博士が首を傾げました。


きいぼうの作戦はこうです。
船に積んである、最後の舫い綱を使って、水門へ届くように船と木を繋ぎ直します。
そしたら、それまで繋いであった舫い綱を、切るのです。
水流に乗った『きいちくりん号』は、門にぶつかる手前で止まるので、そのまま水門を開けることが出来るという、そういう案でした。


らいぞう博士は話しを聞き終わるなり、バシンと膝を叩きました。
「なるほど! そういうことか! 確かにそれなら、うまく行きそうだ! よし、さっそく仕掛けてみようじゃねぇか!」
「そうこなくっちゃな!」
博士の合図を受けるなり、きいぼうが飛び出します。
揺れ動く『きいちくりん号』に飛び乗ると、マストに二本目の舫い綱を縛り付けます。
「よし! こいつを繋ぐ木を探すんだ!」
らいぞう博士の号令で、学者たちが一斉に動き出しました。
けろたとつむりんも懸命に探します。

けれど、なかなか見当たりません。

「この木はどうだ!」
「駄目だ! それじゃ、門までの距離が足りねぇ! もっと近くねぇと」
「あの木はどうかな? きいぼう」
「細すぎるな。船の重量に負けちまう。折れねぇぐらい、太い木を見つけてくれ!」
「他の舫い綱を繋いでみたらどうかしら? 長くすることが出来れば・・・」
「あいにく、これが最後の一本なんだ。村に取りに行ってる暇はねぇよ」

こっちは近すぎる、あっちは遠すぎると言った感じで、ちょうどいい木がなかなか見当たりません。

右往左往する学者たちと打って変わって、らいぞう博士はお地蔵さんにでもなったように動きませんでした。
腕組みして、うつむいていたと思ったら、やがて何かをひらめいた様子で大声を上げました。
「よし、わかった!」

みんな、一斉に足を止めます。

らいぞう博士は水門と『きいちくりん号』とを何度も見比べて、移動を繰り返しました。
やがて、一つの地点に立つと、視線を落とします。
「・・・ちょうど、この辺か」

膝をつく博士を、みんなが取り囲みました。

博士が白衣のポケットから取り出したのは、小さな種と黄色い液体の入ったまあるいビンです。
それを見るなり、学者たちが一斉にざわつき始めます。
けろたとつむりんはなんだかよくわかりません。

駆けつけたきいぼうが博士の手の中の物を見て、目を丸くしました。
「そいつぁ、『ぐんぐん丸』じゃねぇか! そっちに持ってんのは『恵野木』か!」

けろたとつむりんは驚いて、二つを何度も見比べました。
話には聞いていましたが、種のなんと小さな事か。

これが『恵野木』のもとの姿なのです。
希望のそびえる大地6-10
らいぞう博士は膝をつくと、地面に三箇所、三角形になるように穴を開けて、種を一粒づつ、丁寧に落としました。
上から『ぐんぐん丸』を一滴ずつ、垂らします。
更に土をかけて、一分。
ニョキニョキと小さな緑の芽が飛び出してきたのです。

「まあ! 本当にあっという間ですのね!」
目を丸くするつむりんの目の前で、博士は更に一滴ずつ、『ぐんぐん丸』を垂らしました。
「よし、これでいい! 『恵野木』が飛び出すぞ! みんな、離れろ!」

らいぞう博士の背中に守られて、けろたとつむりんは揺れ動く芽を見つめます。

やがて二分が経ち・・・

立ち上がった二葉が、グルグル螺旋を描きながら、お空に向かって伸び始めたのです!
ぐんぐんぐん、ぐんぐんぐん!
緑だった茎が茶色くなり、焦げ茶に変わり、あっという間に太い幹になったと思いきや、薄い色の見慣れた葉っぱがもっさりと茂ったのでした。
希望のそびえる大地6-11
小さな『恵野木』が三本。
三角形の頂点にそびえます。
希望のそびえる大地6-12
「よし、これでいいだろう! おめぇら! もたもたしてねぇで、こいつに綱を巻きつけるんだ! 急げ!」
らいぞう博士の指示で、学者たちがわらわらと動き始めました。

「おやっさん!」
きいぼうが駆けつけます。
希望のそびえる大地6-13
「急ごしらえだけどよ、他の木に比べたら、幹も太いし、根もしっかりしてる。三本もありゃあ、ちっとぐれぇはもつはずだ」
「けど、『恵野木』をこんなことに使っちまって」
「仕方ねぇさ。他にいい手が思いつかなかった。こいつにゃあ、すまねぇが・・・」
そう言うと博士は、『恵野木』を愛おしそうにひと撫でしました。
希望のそびえる大地6-14
博士の眉毛がきっと釣り上がります。
「さあ! ぐずぐずすんな! 船に乗り込め、きいぼう! おめぇさんたちもだ!」
けろたとつむりんを振り返ると、二人の背中をどんっと押します。
「ここはすぐにでも、川に飲み込まれるだろう。船の上にいたほうが、いくらか安全だからな」
「博士たちは、どうするんですの?」
「俺たちは、『恵野木』を支えなきゃならねぇ! いくらしっかりしてるとはいえ、まだ幼若だ。いつまで水流にもつかわからねぇ以上、抜けねぇように押さえねぇとな!」
「そんな! 博士たちが危険じゃないですか!」
けろたとつむりんの泣き出しそうな顔に、博士はガラガラと声をたてて笑いました。
「心配すんな、けろっ子ども! ちゃぁんと策は練ってあるからよ。おめぇらはただ、水門を開けることだけを考えてりゃあいい。見な」
らいぞう博士が水門を指さします。
希望のそびえる大地6-21
「こっち岸の柱にハシゴがかかってるだろ? あいつを登り切った門の上んとこによ、木製の円盤がある。支柱が柱に刺さっててな、円盤を回すと柱ん中のからくりが動く仕組みになってるんだ。お嬢ちゃんが持ってる鍵は、円盤を回すのに必要なのさ。子供のおめぇさんらじゃあ、ちと回しづれぇが、なぁに、二人で力を合わせりゃなんとかなる。おめぇさんらが、俺達や船を操舵するきいぼうに変わって、やるんだ。出来るな?」
けろたとつむりんはお互いを見ると、力強く頷きます。
希望のそびえる大地6-15
「よし!」
博士が学者たちの引いてきた舫い綱を『恵野木』に巻きつけました。
けろたとつむりん、きいぼうは『きいちくりん号』に乗り込むと、力を合わせて、錨を上げます。
希望のそびえる大地6-16
「準備はいいか! おめぇら! 綱を切るぞぉ!」
「やってくれ、おやっさん!」

合図とともに。
これまで繋いでいた舫い綱が。
希望のそびえる大地6-17
一気に切られました!

「行っくぞー!」

支えを失った『きいちくりん号』が動き出します。
初めはゆっくりと。
徐々にスピードを上げて、流されていきます。
「しっかり捕まってろよ!」
きいぼうの掛け声に、けろたとつむりんは体を寄せあい、操舵室の壁にしがみつきました。
希望のそびえる大地6-47
『きいちくりん号』が進みます。
流れに乗って、水門へ。
舫い綱もそれに合わせて、次第に伸びていきます。

バシャバシャバシャ!

水門はもう、すぐそこです!

「よし、今だ! おめぇら、『恵野木』を支えろぉ!」
希望のそびえる大地6-19
『きいちくりん号』と『恵野木』の間を、ビンっと張った舫い綱が繋ぎます。
軋む『恵野木』をらいぞう博士と学者たちが両足を踏ん張って、支えました。

『きいちくりん号』は流れのままに、水門の柱へと導かれます。
「か、舵が重てぇ!」
「きいぼう! しっかり!」
ハラハラと見守る二人。

飛沫に煽られ、何度も揺られて、やがて。
計画通り、水門を支える柱の手前で、船は止まりました。
「二人共、ハシゴに手を伸ばせ! いいか? 船が揺れるかもしんねえが、落ちるんじゃねぇぞ!」
「はい!」
希望のそびえる大地6-20
揺れ動く船の手すりにつかまって、けろたが懸命に手を伸ばします。
そのけろたの体を、つむりんが支えるのでした。
ハシゴを掴んだけろたが振り返ります。
「つむりん!」
「ええ!」

お互いの体を支えあいながら、なんとかハシゴを登りはじめた二人。
ぶつかる水の勢いで、水門までがグラグラと揺れます。
途中、何度も、壊れたらどうしようと不安に感じたけろたでしたが、水門がレンガを積み上げた頑丈な造りだとわかり、次第に安心に変わりました。

門の上に出ると、二人は円盤に掴まりました。
希望のそびえる大地6-22
急いで鍵穴を探します。
「どこかしら?」
「あっ、これじゃないかな!」
円盤を支える支柱の一箇所に、小さな穴が開いていました。
つむりんが持っていた鍵を差し込みます。

カチリ。

鍵が回りました。
二人のお顔が明るくなります。
「やったね、つむりん! これで門が開けられるよ!」
「ええ!」
二人はらいぞう博士に言われたとおりに、円盤を回そうと力を込めました。
希望のそびえる大地6-23
「えい!」
円盤が硬くて、なかなか回すことができません。
思いっきり力を込めますが、やっぱり駄目です。

「どうしたぁ!」
大声を出したのは、きいぼうです。
二人は下を覗きこみました。
希望のそびえる大地6-24
「円盤が硬くて、回らないんだ!」
「ちっとも動かないの!」
「きっと、水圧のせいだ! 門が押されちまって、からくりが動かねぇんだ! よし、待ってろ! おいらが登って・・・うわぁ!」
『きいちくりん号』が大きく揺れたかと思うと、柱から遠ざかって行きます。
「あっ、きいぼーう!」
「見て、けろた! 『恵野木』が!」

つむりんが大声で叫びました。
なんと、『恵野木』の一本が、地面から抜けそうになっているのです!
希望のそびえる大地6-25
らいぞう博士たちが必死に押さえ込みます。
「踏ん張れ、おめぇら!」

ハラハラしながら、見守るけろたとつむりん。
「大変だ! もう時間がないよ!」
「もう一度、回してみましょう!」
二人は渾身の力を込めて、円盤を動かそうとします。
「駄目だ! 動かない」
「そんな・・・」

その時です。
どぉんという音とともに、水門が大きく震えました。
「きゃあ!」
「つむりん!」
危うく落ちかけたつむりんを、けろたが間一髪で助けます。

再び下を覗いた二人。
「あっ! 水が!」
「溢れるわ!」

増え続けた水かさが、とうとう川べりを超えて、流れだしたのです!
流れはあっという間に、『恵野木』を飲み込みました。
らいぞう博士の怒号が飛びます。
「おめぇら! 『恵野木』の間に入れ! 早くしろ!」
学者たちが次々と、三角形に生えた『恵野木』の間に飛び込みました。
希望のそびえる大地6-49
体を寄せ合う学者たちでしたが、その一角が崩れ出します。
「あっ! 『恵野木』が!」

抜けそうになっていた一本が、水流に流されて、地面から離れてしまったのです!
「大変だわ! 博士ー!」
希望のそびえる大地6-26
かろうじて、舫い綱に引っかかった状態で、三角形を保つことが出来ていますが、それもいつまで保つかわかりません。

「おやっさーん!」
きいぼうが叫びました。

けろたがはっとします。
「つむりん、見て! 水の勢いが、さっきより緩くなってる」
「ほんとだわ! 決壊したことで川の流れが変わったのね。水圧が緩んでる!」
「今なら、回せるかも!」
二人は三度、円盤を掴みます。

「行くよ、つむりん!」
「力を合わせましょう!」

「せぇの!」
希望のそびえる大地6-27
けろたもつむりんも両足を踏ん張って、全力を出します。
「みんな・・・!」

すると、どうでしょう。
さっきまでうんともすんとも言わなかった円盤が、少しづつ動き出したのです!
二人は更に、踏ん張ります。

「頑張れ、二人共! 回すんだ!」

きいぼうが!
希望のそびえる大地6-30

らいぞう博士が!
希望のそびえる大地6-28

学者たちまでもが、二人を応援しています!
「頑張れ!」

ギリギリギリ・・・
柱の中で、何かが動く音が聞こえてきました。
「あ、後少し・・・!」

ギリギリギリ、ガコン!

「わっ!」
「きゃっ!」
急に円盤が緩くなりました。
二人は勢い余って、膝をついてしまいます。

ゴウンゴウンゴウン・・・
円盤の動きに合わせて、水門がみるみる上がりだしました。

「門が開いたぞ!」

流れ落ちる水の向こうから、眩しいぐらいの夕日が差し込んできました。
希望のそびえる大地6-31

「やった! 成功だぁ! おっとっと」
希望のそびえる大地6-33
大喜びのきいぼうでしたが、流れに乗り始めた『きいちくりん号』を慌てて、操船します。

押し寄せていた水流が、一気に本筋へと流れていきました。

学者たちもみんな、手を振り上げて、喜んでいます。
希望のそびえる大地6-32
「ふう! どうやら助かったみてぇだな」
らいぞう博士がずぶ濡れになりながら、水門を見上げました。

門の上から、けろたとつむりんが手を振っています。
つむりんのお目目から、大粒の涙がこぼれ落ちました。
「やったね、つむりん!」
「ええ!」

川の氾濫が収まっていきます。

もう安心です。

・・・

それからの二日間。
村の被害はクラウディア博士の指示が的確だったため、さほどでもありませんでしたが、水に浸かってしまったおうちもあって、修復が必要となりました。

けろたとつむりんは進んで、作業をお手伝いしました。
学者たちはみんな親切です。
誰もが村を大切にしている想いが伝わって来ました。

村にいる間、三人はらいぞう博士のおうちで過ごしました。
博士と『恵野木』のお世話をしたり、椿の手入れをしたり・・・。

あっという間に三日が過ぎていきました。

そして、いよいよ旅立ちの朝。

旅路を再開する三人を、らいぞう博士や学者たちが見送りに来てくれました。
希望のそびえる大地6-34
「いやぁ、助かったぜ。おめぇたちがいてくれたおかげでよ、大事にならずに済んだ。いや、恩に着るぜ」
頭を下げるらいぞう博士を、けろたとつむりんが大慌てで止めます。
「ほんとだぜ、全く。おいらたちと『きいちくりん号』がいたから良かったようなもんの、そうでなけりゃあ、今頃どうなってたか、わかったもんじゃねぇや。年取ると頑固になるって言うからよ、まあ、お互い譲り合って、仲良くやっていけよ」
胸を張るきいぼうを、博士のげんこつが襲います。
希望のそびえる大地6-36
「てやんでぇが! けろっ子のくせして! 生意気言うんじゃねぇや!」
「イテテテ・・・なぁんだよ! 人が親切で言ってやってんのに! これだから年寄りは頑固でいけねぇ」
「まだ言うか!」
らいぞう博士がさっと拳を振り上げるのを見て、きいぼうは大慌てで『きいちくりん号』に逃げ込みました。
けろたとつむりんは可笑しくて、仕方がありません。
博士もガラガラと大声で笑います。
希望のそびえる大地6-37

きょろきょろするつむりんに、らいぞう博士が言いました。
「クラウディアのババアなら来ねぇぜ。声かけたんだけどよ、ガキじゃあるまいし、ぞろぞろ行くもんじゃねぇだろってよ。けっ、ひねくれモンめ」
「クラウディア博士らしいですわ」
つむりんが寂しそうに微笑みます。

「あの、博士。クラウディア博士はやっぱり、出て行っちゃうの?」
けろたの質問に、らいぞう博士はあごひげを撫で付けました。
「そればっかりは、わからねぇな。本人が決めることだ。俺達は止めもしねぇし、勧めもしねぇ。けどよ、この大地を守りたいってぇ気持ちは、どいつもこいつもおんなじなのよ。その決意が揺らがねぇ限りは、どこにいても仲間だ。離れていてもよ、大地を通して繋がってるのさ、俺達はな。そうだろ?」
らいぞう博士の問いかけに、つむりんが笑顔で答えます。
不思議に思うけろたでしたが、つむりんがとっても嬉しそうだったので、無理に聞くのは止めました。

『きいちくりん号』に乗り込んだ三人に、らいぞう博士が声をかけました。
希望のそびえる大地6-39
「元気でなぁ、けろっ子。体を大事にしろよ」
「おやっさんもな」
「これから先、いやぁなこともあんだろうけど、互いに支えあって、しっかりとやるんだぜ」
「はい、博士」
三人は力強く頷きました。

「ありがとう、博士! 皆さん! また来ますわ!」
「いってきます!」
帆を張る『きいちくりん号』。
風を受け、川の流れに乗って、前進します。

「よし! 出航!」

水門をくぐり、まだ見ぬ世界へ。
希望のそびえる大地6-41

「忘れるなよ、お嬢ちゃん! ここでのことを! 辛くなったら、思いだせ!」
手を振るらいぞう博士の隣には、三本の『恵野木』の姿がありました。
希望のそびえる大地6-40
一度は抜けたと思った一本も、よく見ると、隣の『恵野木』と根がからみ合って、とどまっていたのでした。
今や更に、太い根を伸ばし、懸命に地面と繋がっています。

「俺と『恵野木』はよ、一蓮托生なのよ。こいつが踏ん張ってくれてるから、俺も踏ん張れる。俺たち学者の希望の象徴なのよ、こいつはな。砕け散っても消えるわけじゃねぇ。命の一つ一つが大地に染みこんでくんだ。俺達の意思も、踏ん張ってきた思い出も、全部、芽吹いた緑ん中に刻まれてんだぜ。この大地が俺達、そのものなのよ! そう考えるとよ、心強くねぇか?」
つむりんの両目には、遠ざかっていくらいぞう博士と『恵野木』の姿が写っています。
希望のそびえる大地*6-51
「お嬢ちゃんの記憶もよ、全部大地が覚えててくれてるさ。今は思い出せなくてもよ、同じ時間を過ごした記憶が、根っこの先んとこで、誰かの記憶と繋がってる。だから、悲しむこたぁねぇ。地に足さえつけていれば、世界中どこにいようと、ずっと誰かと繋がってられるんだからよ」
涙に滲むつむりんの視界から、らいぞう博士の姿が遠ざかっていきます。

地に足さえつけていれば・・・。

これほど心強い教えは、ありません。

この先、どんな真実が待ち受けていようと、博士の言葉を胸に立ち向かおう。
そう心に誓う、つむりんなのでした。
希望のそびえる大地6-52


船尾に立つ、けろたとつむりんに、きいぼうが操舵室から声をかけました。
希望のそびえる大地6-42
「もう少し行ったところによ、大桜があるんだ。その下で約束通り、花見にしようぜ」
「ほんと? やったぁ!」
「よかったわね、けろた」

楽しそうに笑い合う三人を乗せて、船はゆっくり進んでいきます。
希望のそびえる大地6-44

川べりに並んだタンポポが、船風に揺れて、まるで見送っているみたいです。
希望のそびえる大地6-46

七大樹図書館まで、後少し。


*****

こんばんは、ちゅけです(・∀・)

・・・(゚∀゚)

終わったーッ!ワーイヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノワーイ

ようやく、完結しましたぞ!
『希望のそびえる大地』!

とっても長かったぁ。
長すぎました。
いや、長くしたの、自分だから(-_-)/~~~ピシー!ピシー!

テーマがテーマだけに、ちゅけの技量で書き終えれるのか、不安もありましたが、なんとか纏まりましてございます。

つむりんの決意の回でもありました。

自分は何のために進んでいるのか?
本当に知りたいことは何なのか?

事実を知って辛い思いをするかもしれないことも、きちんと念押しさせていただき、その上で新たに七大樹図書館を目指してもらいたかった。

・・・鬼の所業。
うぅっ(TдT)

ちなみに、最後のたんぽぽは、一話の最初の場面から来てます。
気になる方はぜひ、一話へ(*´ω`*)

そうそう。
旦那様に「つむりんに手足はあるのかい?」と聞かれたのですが・・・

ありますよぉ(・ε・)プップクプー

以前書いた『たどり着いた知識の森』シリーズでそのこと書いてまーす。
旦那様は忘れてしまったようですので、念のため。

〈たどり着いた知識の森*後編より〉
「さよう。わしも未だかつて、会ったことはないがの、文献によると、ちょうどお前さんのような姿をしておるそうじゃ。空を見通すほどに伸びたツノのような目、深い渦の刻まれた殻を背負い、波打つ四肢を自在に伸縮させることのできる一族」

はい。
ここです(b´∀`)ネッ!

つむりんの体も伸びるんです。

まいまい一族かどうか、わからないんじゃ・・・?

まあまあまあ'`,、('∀`) '`,、

とにかく、伸びます。

今度、つむりん手足バージョンを開発してみよう。

けろたとつむりんの冒険。
次回はいよいよ、七大樹図書館です!

図書館・・・

。・゚・(ノ∀`)・゚・。

制作困難極まれり。

出来上がりはいつになることやら。

その間に、ぴょんすけとスワロの続きも書きたいし、色々作らなくてはいかんのう( ゚ ρ ゚ )ボー

頑張りまっす!

*****

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コメント:
この記事へのコメント:
感動した~っ
ちゅけさ~ん またまた大作お疲れ様でした~。

い・いや~凄いです。もうね夢中でお話の世界に
入り込んで「がんばれ~」って力が入っちゃって、
らいぞう博士達が水に飲み込まれそうになっちゃう所が
ドキドキしました。

羊毛で作られてこんなに凄くて絵本になったらステキ
だろうなっていつも思います。

クラウディア博士のお部屋もとってもキュートでした。

水門が無事に開いてよかったわ~
この先がもっともっと楽しみになっちゃいます。
あ!プレッシャーかけてるつもりはないですよ~。
2012/10/26(金) 15:26:34 | URL | miruco #-[ 編集]
mirucoさ~ん!☆・:゚*オォヾ(o´∀`o)ノォオ*゚:・☆
いつも、ありがとうございま~す(*ゝω・)ノ アリガ㌧♪
今回は本当に本当に大変でしたぁ。
まず写真が半端でない量でして、最終話だけでも、七十枚!パシャッ! Σp[【◎】]ω・´)
同じ場面を何枚も撮った中から、自分なりにいい絵をチョイスしておるので、もう合計はナンマイ(何枚)ダー(T人T) ナムナム
でも、楽しかったです!(^^♪
おうちを作ったり、水門を作ったり、自分の想像に近づいていくことが嬉しくて嬉しくて、夢中になって作っておりました。
だから、羊毛フェルトは止められません(∀`*)ゞイヤァ

自分なりにかなり力を入れて制作したので、mirucoさんにドキドキしながら読んでいただけて、私のほうが感動しました!(・∀・)
2012/10/26(金) 19:44:14 | URL | chu*ke #-[ 編集]
すごくてびっくりしました。かえるさんたちに動きがあって、いろんなキャラクターがいて、お話も作られてて…
一個一個、丁寧に作られていて…
これからも、素敵な作品を作っていってくださいね*^-^*
又、遊びに来ます♪
2012/10/27(土) 06:39:11 | URL | クリモ #-[ 編集]
クリモさん
さっそく遊びに来てくださって、嬉しいです!
ありがとうございます!(・∀・)
クリモさんの作品をいつも楽しみにしております。
ハッピー君たちのような、ほんわりと温かいキャラクターを作れるようになれたらなぁと思っているのですが、なかなか難しいです(^_^;)
もっともっと頑張ります!

ぜひ、また遊びにいらしてください。
私も遊びに行かせて頂きます(*^_^*)


2012/10/27(土) 22:27:53 | URL | chu*ke #-[ 編集]
大作ですね!
ウワ~凄いですね!
もう、ひたすら感心です(☼ Д ☼) !
本当に写真がきれいで、見とれちゃいます。
ポストカードにしたら素敵v-238
これだけの写真、50枚くらいですか!アップするだけで数日に分けたくなる数ですね・・・
私は20枚くらいの記事で大作気取りなんですよ。
きいちくりん号が本当に竹に見えるのが不思議です。
羊毛で竹!あの微妙な色、どこの羊毛なんですか?
竹の繊維ぽさまで上手に表現されていてあっぱれですね。激しい流れの時と穏やかなときと川の色が違うところがいいですね。穏やかな川の色と船の黄色がうまく溶け合っていてバックのピンクて手前のツムリンがアクセントになっている写真、みんなのポースもかわいくて構図も良くて好きです。
ツムリンの事も気になりますが、クラウディア博士の過去も暴かれるのでしょうか?気になります。
2012/11/04(日) 23:16:44 | URL | kaori*** #3.7rhxuY[ 編集]
kaori***さん
コメント、ありがとうございます!☆彡
写真は『希望のそびえる大地』全話合わせると、400枚ほどあるのではないかと・・・パシャッ! Σp[【◎】]ω・´)
没になった写真を合わせると、700枚以上・・・パシャッ! Σp[【◎】]ω・´)

う~ん、よく撮ったなぁ(。_゚)〃ドテッ!

『きいちくりん号』の羊毛は、鎌倉のペレンデールさんのものです(^^)
ネット通販もしているので、とても便利。
和の色から、洋の色まで、かなりの品ぞろえ。
可愛くて、ついつい買いすぎてしまいます( ゚∀゚)・∵. グハッ!!
http://www.perendale.net/こちらからどうぞ!

クラウディア博士のことにはもう少し触れたかったのですが、お話の都合上、書けなかったです(T_T)
図書館編で、触れられたらいいなぁと思っています。
アカデミー(けろたたちの世界で唯一の学校)と絡めて書きたいので。
うまくいくかどうか・・・。
お楽しみにです!(人´∀`).☆.。.:*・゚

2012/11/05(月) 11:11:46 | URL | chu*ke #-[ 編集]
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